疾病の自己管理技能

健康管理をしっかりして心身ともに良い状態を保つことは、実際にはなかなか難しいことで、知識や工夫、努力が必要です。健康管理(疾病の自己管理)には、@予防、A再発や悪化の防止、B再発や悪化の徴候に早く気づいて適切な対応をする、ということが含まれます。これが特に問題になるのは、再発しやすい病気や、慢性化しやすかったり能力障害(disability)を伴う病気の場合です。もちろん、糖尿病や胃潰瘍、白血病などの身体の病気でも、再発や慢性化がありますので、疾病の自己管理は重要です。最近ではこうした身体の病気を上手に自己管理するための心理教育も行われています。統合失調症(精神分裂病)や慢性化したうつ病などでは、再発のしやすさや能力障害が問題になりますが、身体の病気と比べて、形や数値に表れにくい病気ですので、本人や家族の自覚が得られにくいこともありますので、治療者・支援者の側の特別の努力や工夫が必要となります。

一般に心理教育では、病気の性質についての情報提供、病気に対する効果的な治療法の説明、再発などの徴候が表れたときの適切な対応の仕方についての知識の提供が行われます。こうした知識の提供で病気の自己対処の方法が身に付くことも多いのですが、精神障害のうち統合失調症などでは、認知障害や学習の障害があることも多く、また知識が得られても自分の問題に引き寄せて理解されにくく、せっかくの知識が活用されなかったり、知識はあっても実際に行動するための生活技能が不足している場合も少なくありません。

そこでこうした疾病を持つ方を対象として、認知と行動の両面に働きかける認知行動療法としてSSTが用いられるようになっています。疾病の自己管理技能を高める方法としては、SSTのうち、モジュールと呼ばれる方法が良く用いられます。これは生活上で必要な知識や技能を整理し、それをビデオやワークブックなどの教材にまとめた学習パッケージで、知識の提供だけでなく、ロールプレイや実地の宿題などにより、「頭で分かる」だけでなく「必要なときに自分で対処できる」ことを目的に実施されます。

疾病の自己管理技能に直接関係したモジュールとしては、「服薬自己管理モジュール」、「症状自己管理モジュール」、そしてそれらのエッセンスをまとめた「地域生活への再参加プログラム」があります。これらは日本語版が作成されており、わが国においても各地で用いられるようになっています。