W.第51回 日本社会福祉学会
琉球大学法文学部 水野 良也
日本社会福祉学会は4000人の会員数を擁し、社会福祉系の中で最も大規模な学会です。第51回を数える今年の大会は、10月11日(土)〜13日(祝日)の3日間にわたって、大阪の四天王寺国際佛教大学が主催校となり、羽曳野市の丘陵に位置する同大学において開催されました。今年の参加者総数は学会事務局によれば1560名。大会テーマは「21世紀社会福祉の価値と倫理」でした。社会福祉基礎構造改革と呼ばれる戦後最大の制度変革期の中で、実践における指針や実践者としての価値観があらためて問われていることを伺わせるテーマ設定と言えるでしょう。
プログラムは、記念講演、大会記念シンポジウム、学会企画シンポジウム等の他に、口頭発表273本、ポスター発表31本、自主企画シンポジウム9本が報告されました。社会福祉学会は毎年会員数を増やしており、それにつれて発表本数も年々増加傾向にあります。
日本社会福祉学会においてSSTに関する発表を私たちが最初にしたのは、1999年、岡山県の川崎医療福祉大学を会場とした時でした。ルーテル学院大学の前田ケイ先生のお声かけで、明治学院大学の八木原律子先生と私の3人が、自主企画シンポジウムの枠で報告を致しました。「日本におけるSSTの実践と課題」と題した発表では、前田先生が精神保健福祉の入院や外来患者さんおよび家族のためのSSTを紹介し、八木原先生が地域の作業所利用者の就労援助や社会参加に関するSSTの取り組みと実績を伝え、水野が少年院でのSSTの実践に基づいた報告をし、それぞれの分野における課題を含めて論じました。予定していた資料の50部がすぐになくなるほどに参加者が多く、高い関心を集めました。
今年はその第二弾として、自主企画シンポジウムの2時間枠で「日本におけるSST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)の新しい試みと可能性」を報告致しました。
まず前田先生が、SSTの概要を説明した上で、現在様々な分野に広がっているSSTを実施目的に応じて「発達的SST、予防的SST、治療教育的SST」に分ける考え方を紹介されました。アメリカの高校では、生徒がしばしば遭遇する場面での社会的スキルを解説したパンフレットを校内に置いてある例があることを、実際のパンフレットも持参して説明されました。大変興味深く、日本においても予防的SSTを普及させていく必要性を考えさせられました。
次に水野が、「ソーシャルワークにおけるSSTの重要性」と題して、主に精神保健福祉分野からみたSSTとソーシャルワークの考え方の重なり具合を整理すると共に、ソーシャルワーカーがSSTを行う意義について強調しました。生活の全体性を把握することや、社会資源の活用や開発を視野に入れるソーシャルワーカーが、SSTに携わることの重要性を訴え、社会福祉学会会員を意識した報告を心がけました。
続いて八木原先生が、「精神科領域におけるSSTの意義 −特に就労支援や教育支援におけるSST−」というタイトルで、個人と環境との調整を含む包括的支援の一環としてSSTを取り入れている例を、社会資源との連携や啓発活動、学習プログラムの内容までも踏み込んで具体的にわかりやすくお話しして下さいました。SSTによる就労支援セミナーでは、協力的な事業主を招いて面接で大事にしているポイントを直接尋ねてみるなど、きわめて実践的で役に立つ援助内容だと感じました。
最後にデモンストレーションとして、八木原先生が就労支援のSSTを、そして前田先生が少年院のSSTの実際と個別SSTの例を鮮やかに実演されました。会場に来ていたPSWの吉田みゆきさん(当協会認定講師)にもロールプレイに加わって頂きました。
今大会のプログラム上の影響からか(学会企画シンポや自由研究発表までもが同時並行で行われた)、20名程の少人数の参加ではありましたが、終了後も質問や挨拶に来られる方もいらっしゃり、報告者一同、手応えと喜び持って終えることが出来ました。