V・特集SST普及協会第8回学術集会in幕張
 V−1.実行委員長からの報告
  実行委員長 野末 浩之
 去る2003年12月5,6日の両日にわたり、千葉県幕張のOVTAを会場に、SST普及協会第8回学術集会が開催されました。参加者は2日間で658名を数え、学術集会としては過去最多のご参加を頂くことができました。ご参集の皆様、講演、演題発表してくださった先生方に厚く御礼申し上げます。
 集会は、西園昌久先生による会長講演「地域ケアの時代の精神科医療の理念と技術」で幕を開けました。西園会長は、集会のメインテーマ「地域ケアの時代を切り開くSST」をキーワードに、世界的にも突出して精神病床数が多く、地域ケア中心の精神科医療への転換が進行しつつあるわが国の現状を紹介され、そのためにはSSTを始めとした心理社会的治療の技法が必要であること、精神障害に対するスティグマ〜「世間の目」〜除去が大切であること、等をお話しくださいました。会長は「理念」「技術」という壮大な内容を平易に、温かく語られ、聴く者に感銘を与えました。
 続いての「特別企画;統合失調症の認知療法」は横浜国立大学の石垣琢麿先生「幻覚妄想の認知療法」、鳴門教育大学の井上和臣先生「SSTと認知療法をどう架橋するか」という豪華2本立て!のご講義を頂きました。石垣先生は充分なアセスメントと信頼関係を基礎として、幻覚・妄想を有する方への認知療法の実際を判りやすくご講演下さいました。井上先生は、認知の変容(処理技能のレベル)に着目することの大切さをお教えくださり、「SSTと認知療法が相互補完することが生産的である」と締めくくられました。両先生とも、学術的な内容を魅力的にプレゼンテーションして下さいました。
 1日目の後半から一般演題、ポスターセッションが開始されました。2日間で全30演題(一般16、ポスター14)という、多数の発表をお受けすることができました。発表内容は多岐に渡るものでしたが、どの会場でも熱心な質疑が交わされており、SSTの学術面での進歩と深化を実感することができました。
 2日目は向谷地生良先生と浦河べてるの家メンバーの皆様によるデモンストレーション「自分自身で、そして共に―当事者研究、爆発救援隊の試み−」を披露していただきました。爆発(暴力や破壊・自傷行為)という深刻な課題を有する当事者が、SSTの技法を利用して自らの爆発を「研究」し、仲間の力を借りて「救援隊」を出動させ、問題解決を目指すというものです。満員の会場が壇上のメンバーと一体となった感動的なライヴセッションの素晴らしさを、言葉では十分にお伝えすることはできないことが残念です。
 集会の最後はシンポジウム「地域ケアの時代を切り開くSST」でした。藤代健生病院の蟻塚亮二先生「住居ケアの展開の経験」、山梨県立北病院の辻貴司先生「病院機能強化プラントSST」、慶應義塾大学の水野雅文先生「『みなとネット21』の活動と精神保健福祉地域ネットワーク」、国立精神・神経センターの安西信雄先生「長期在院患者の退院促進と地域ケア」の内容で、4名のシンポジストからお話しを頂きました。指定討論として登壇された北海道大学の上野武治先生は、病院機能の低下や障害者プランの進捗状況について率直な懸念を表明され、通院SSTの新設など国家施策として福祉予算拡充の必要性を強調なさいました。シンポジウム後半の討論も、現在のSSTを取り巻く状況や援助のあり方を理解する上で有用な、密度の濃いものでありました。
 本集会を成功裏に終えるに当たりまして企画・運営にご尽力いただきました全ての皆様、特に首都圏実行委員会の皆様、事務局を務めた横浜メンタルサービスネットワークの鈴木弘美様、そして舳松克代事務局長にこころよりの感謝を申し上げます。