Z・近刊情報
キングドン,DG原著(原田誠一訳)
「統合失調症の認知行動療法」
日本評論社, 2002年10月刊。(本体価格:3800円)
統合失調症(以下、分裂病)をもつ人を対象にSSTを実践する場合、幻覚妄想や著しい思考障害にあり、現実的な目標設定どころか病的体験にとらわれ治療関係を結ぶこと自体困難な人も少なくありません。既存のプログラムでは、(リバーマンの症状管理モジュールで「持続性の症状に対処する」技能領域がありますが)、陽性症状に対しては薬物療法を確実に受ける技能・医師に相談する技能の練習程度が実情ではないでしょうか。
本書では、陽性症状に対する個人精神療法としての認知行動療法を英国での実践的研究をもとに紹介されます。第一部は、いわば「理論編」で、了解不能とされてきた諸症状が、実は「健常者」にもおこりうる心理現象と連続性のあるものと解釈し・患者様にその観点から接する意義が示されます。第二部は、事例集スタイルの「実践編」で、治療のプロセスが具体的に書かれており、諸技法がイメージアップできます。そして、SSTと本書の認知行動療法をどのように組み合わせるのがよいかにも触れられます。そしてSSTだけでは十分技能が般化しない問題を率直に挙げています。
訳者は、分裂病の予防のための早期心理教育に取組んでこられ、幻聴の認知療法として「正体不明の声」(アルタ出版)を昨年上梓し各地で好評です。この本も、分裂病臨床をよく理解した訳者によるものに相応しく訳語は大変わかりやすい。また、本書の随所にみられる訳注には訳者の臨床経験や日本での類似の研究が紹介されており、これだけでもかなり勉強になります。巻末の文献も邦訳について触れられ有用です。
本年12月の第8回SST学術集会では「分裂病の認知療法」が特別企画として取り上げられます。その意味でも、本書を一読することは多くの会員にとってタイムリーな課題と思います。 熊谷 直樹