U.特集 第7回SST学術集会札幌大会
U-6. 分科会の座長を担当して
一般演題1 「入院におけるSST」を担当して
支笏湖病院 三浦 富士雄
私は「入院におけるSST」を北林病院.吉田みゆき先生のアドバイスを頂きながら座長を務めました。前半の2題は服薬モジュールについてのご発表でした。 河岸先生(吉祥寺病院)からは、6年間継続された服薬モジュールの維持と院内普及について、医師の協力を図る具体的な例を「カルテにメモを挟む」「管理者へのグループ見学を推し進めその理解を得る」等、病棟内勉強会や宣伝でメンバーに対する服薬教室への参加とその効果をアンケートで確認し継続の力とされた事など様々な工夫が必要なのだと思いました。 富田先生(福島県立医科大)は新規坑精神薬の採用に伴う副作用の対処法について新たに福島医大版副作用チェック表を作成することで躁うつ病等の感情障害圏の患者さんへもそれを拡大適用が出来て、生活技能のバラツキが生じるメンバーに対し服薬指導の中で個別対応が出来たことを報告されました。ルーチンを活用しつつ個別に分かりやすく情報としてメンバーに伝え理解を得ることの大切さを考えさせられるご報告でした。次に、佐藤先生(北海道立緑ヶ丘病院)より中央式SSTから病棟SSTの展開についてメンバーに対する自己効力感尺度(SECL)の質問項目を参考に評価し、メンバー、スタッフに「与えた長所」として具体的事項を挙げられ経験の少ないリーダーに対しメンバーがリーダーを盛り立てるエンパワーメントが生じ、医師がプレ、アフターミーティングにスタッフで入る事でSSTの運営と理解に相乗効果が発生したようです。 河野先生(福岡大精神医学教室)は、長期入院の統合失調症(精神分裂病)患者さんへのSSTの効果を行動レベルの変化や精神症状、認知機能、QOLに及ぼす影響について数量的に表され視覚を通じて相違を分かりやすくご報告されました。この様な研究が「Evidence-Based
SST」の要因になるのでしょう。今後の更なるご研究を願っております。
一般演題2 「デイケアにおけるSST」の座長を担当して
市立小樽第二病院 谷川 知子
「デイケアにおけるSST」では、各施設の現状に即してSSTが行われている様子が報告された。1題目では、基本会話モジュールを導入し、ロールプレイや派生する問題をより現場に即した場面に内容を修正して行ったこと、またセッション中に他己評価を行うといった試みが発表された。モジュールという型の中にも、メンバーにとってより身近な課題を取り入れていくことが、般化のために必要と思われた。2題目は、施設内という限られた環境での評価はメンバーの対人技能を十分に評価できていないとの振り返りから、スタッフがメンバーに同行して実際の場面を観察することにより、より的確に評価を行うことが出来たという興味深い報告だった。SSTがSSTを行っている場のみで自己完結せず、常にSSTを行っている場と実際にメンバーが活動・参加している現場とを反復する中で、練習、評価することが必要であることを改めて感じた。3題目は、デイケアメンバーに送信技能よりも受信技能の障害がより大きいという現状から、受信技能の改善を目的に人の話を聞く練習を繰り返し行ったという試みが報告された。開始前に比べて、人の話を集中して聞けるようになったという結果が見られ、今後の課題として人の表情や細かいニュアンスを読み取る技能の改善に、更なる工夫が必要と思われた。統合失調症患者の認知障害の改善のために、SSTが有効に用いられることが望まれる。4題目は、就労SSTについて先駆的な取り組みがなされている施設からの報告だった。特に体験就労のように現場を経験した後や、ジョブコーチに組み入れてインビボでSSTを行うことができると般化のために有効と思われた。職業準備性の向上のため、また精神障害者にとって困難が大きい職場定着の橋渡しとして、有効な援助技法と思われた。求職活動、就職、職場定着というそれぞれの段階に合わせて、どのような技能を獲得することが有効なのか、更なる研究を期待したい。
一般演題3 「運営・評価・研修の工夫」の座長を担当して
札幌医科大学保健医療学部臨床作業療法学講座 池田 望
2002年の11月8日と9日に札幌で開催されたSSTの学術研修会で、舳松先生と共に一般演題3の座長として参加する機会をいただきました。このセッションは、東京武蔵野病院の佐藤幸江先生による「より効果的なSSTの運営をめざして〜ベラック方式導入の試み〜」、横浜舞岡病院の加瀬昭彦先生による「デイケアにおけるSST運営の工夫−ベラックらによる共通課題技能方式と基本訓練モデルとを組み合わせて−」、早稲田大学人間科学研究科の小山徹平先生による「Social
Skills Scale(SSS)の作成の試み」、そして東京都立中部総合精神保健福祉センターの熊谷直樹先生による「SST研修会のあり方をめぐって−現地実施型研修会の1事例から」の4演題から構成されていました。セッションの運営方法からスキルの評価、研修方法と内容の幅が広いセッションでしたが、それだけにいろいろな視点からSSTを眺めることが出来たように思います。
前半2演題では最近熊谷先生らによって邦訳されたベラックの方法を取り入れた実践が報告され、3題目のSSS作成の報告もそのベラックのSSTを参考に新たな評価方法を模索しているものでした。今後のSSTに新たな流れが出来たように感じます。この方法はリーダーの指導的役割が大きくセッション自体もさらに構造化されているものです。当然ですがその分対象者理解の大切さを、報告を聞きながらあらためて感じました。最後の現地実施型研修会の報告はいわば出張研修会であり、受講する側にはメリットの大きい方法だと感じました。ただ、受講する側の意欲の必要性を強調されていたのが印象的でした。
私は今回の研修会では実行委員も兼ねて参加させていただきました。不手際も多かったかもしれませんが、参加された多くの方々のご協力に感謝いたします。
一般演題4 「地域におけるSST」の座長を担当して
北海道立緑ヶ丘病院 佐藤 真吾
「地域におけるSST」の座長を、森山先生(船橋市 総武病院)とご一緒に致しました。4つの演題は、@体重管理モジュールというような新たなモジュールの予感を漂わせるもの、A精神科クリニックにおいて、SSTに認知的再体制化を併用したことで改善した症例の報告、B作業所にSSTを導入することの意味を、SSTの主体者である当事者が、語りを通して考え共通認識に至ったもの、CSSTグループが基本となり、当事者が実生活の場でSSTを活用するに至った事例の報告という内容でした。いずれの演題も、先生方の新たな視点や工夫、現場における必然性などにより、SSTが地域の中で着実に拡がりを見せ、新たな方向性を示唆する内容となっています。
さて、私が座長をしましたB、Cの演題は、当事者や作業所職員が発表されました。この2つの発表を聞きながら、私自身「どうしてSSTを始めたのか」とか「誰のためにSSTをやっているのか」あるいは「利用者の日常生活に即した形でSSTを実践しているのか」「利用者に役立っているのか」というようなことを自問自答していました。まだ、自信を持って話せるようになっていませんが、「日頃、私たちが実践しているSSTは、利用者一人ひとりに役立っている」と、客観的にも主観的にも説明できるよう、病院を含めた地域の環境を整え、SST技術の向上に努めなければいけないと強く感じました。
近年、プロシューマーの存在が叫ばれています。今回のように、当事者の方々が、自身の体験や日頃の生活、活動などを通し、SSTという療法の方法やSSTを一つの技術としている職員の力量、アウトカムなどについて、さまざまな学会で発表されることを願っています。
2002年夏、当院ではピアカウセリングを導入しました。SSTにおいても、当事者の方の力をドンドン活用していきたいと考えています。
一般演題5 「さまざまな事例へのSST」の座長を担当して
浦河赤十字病院 伊藤 恵里子
「さまざまな事例へのSST」では、四つの演題が発表されました。いろいろな分野でのSSTの取り組みが報告され、SSTの広がりを実感させられる発表でした。印象的だったのは、各々のニーズに応じて個別化、細分化の研究を深められていること、対象者に合わせた工夫がなされていることです。
まず、「退行からの育ちなおしにSSTが効果的であった一症例」と題し、奈良県立医科大学精神医学教室の川端氏の発表がありました。退行を示す当事者に対し、幼児期から成人期までの発達課題に着目してSSTを導入したところ、基本的信頼感や自己表現の成長に効果があったという報告でした。浦河赤十字病院向谷地氏からは、感情のコントロールがうまくいかず、自傷行為や暴力行為を繰り返す青年に対し、爆発兆候が現れた時点でSOSを出す練習経過が紹介されました。この練習の特徴としては、爆発しそうな<自分>役を他のグループのメンバーに演じてもらい、自分自身が<自分>を爆発前に助ける、相談に連れて行くという練習を展開しています。
その他、守山荘病院の石田氏より学校分野でのSSTとして、対人関係を築くのが困難な高校生へのSST、一陽会病院の佐藤氏からは、発達障害を持つ子どもに対して社会性の発達を促すSSTの実践報告がされました。子どもに合わせてきめ細かな課題設定をし、より分かりやすいセッションを目ざして可愛いトゥールで視覚に訴え、言葉使いにも配慮(「目を合わせる術」等)している点はとても興味深く聞かせていただきました。
以前SSTへの意欲がわかないのは、参加者の問題ではなく我々リーダーの問題である、との指導を受けたことがありますが、SSTがいかに楽しく、自分たちの暮らしに役に立つかを実感してもらうには、型どおりのことを行うだけでなく、いろいろなアイディアが必要であり、それによってふくらみを出すことが可能であることを考えさせられました。そしてSSTが確実にさまざまな分野に広がっていることを認識できる発表でした。
