U.特集 第7回SST学術集会札幌大会

U-4. 特 別 講 演 「精神分裂病から統合失調症へ−病名変更の意味と精神障害者リハビリテーション」

札幌医科大学神経精神医学講座 齋藤 利和

 日本精神神経学会は過日開かれた臨時評議員会で、「精神分裂病」の呼称を「統合失調症」に変更することを決めた。報道によれば「精神分裂病という呼称は精神それ自体の分裂と解されることが多く、医学の一病名の枠を越えて患者の人格の否定につながる」として変更を決めたとのことである。新しい病名の選定にあたっては原因、中心症状・所見の他、病名が患者・家族に受け入れられ易く、その病名によって苦痛や不利益を患者・家族にもたらさないことも考慮に入れられたという。

 「統合失調症」の意味を少し私なりに考えると「失調」とは精神の失調を意味し、「精神のバランスが崩れる」というように解してよいと思われる。統合とは「まとまり」のことであろう。すなわち、「統合失調症」とは「考えのまとまりが悪くなって」、「情のまとまりが悪くなって」、「意志のまとまりが悪くなって」バランスを失った状態と言える。

 「統合失調症」という新しい病名が「精神分裂病」と呼ばれてきた精神疾患の障害を適切に言い表しているかどうかについては未だに論議があるところであろう。感情障害、神経症は勿論のこと人格障害やアルコール・薬物依存の一部も統合勿論失調症と呼べる側面を持っている。しかし、これまで「精神分裂病」と呼ばれてきた病気は最も多種類の精神機能のバランスが崩れ、それによる影響も比較的重大であるという意味で適切な呼称であると思われる。

 もっと積極的なこの呼称の受けとめもある。失調(精神機能のバランスが崩れる)状態とは視点を変えてみれば、考え(知)、感情(情)、意志(意)などの精神機能の全てが障害されているのではなく、その一部が障害されているということであり、そうであればこそ、バランスの崩れも起こりうるのである。したがって、心の健康な部分に働きかける精神・心理療法、作業療法のこの障害に対する治療的意味が呼称変更と共にもっと積極的に評価されることを期待したい。さらにいえば、この呼称は、「回復の可能性」をその中に含んでいることばである。中井久夫流にいえば、「患者・家族の身になってみると、『精神分裂病』が絶望を与えるのに対して『統合失調症』は回復可能性を示唆し、希望を与えるだけでなく、『目標』を示すものと言うことが出来る」ということになる(精神看護2002年3月)。治療の「目標」も「幻覚・妄想をなくす」ことから、精神機能のバランスが崩れの回復すなわち生活の回復へと変わってくるであろう。

 数年前から従来のような「幻覚・妄想をなくする」抗精神業薬とは一味違った、いわゆる非定型抗精神病薬がしようできるようになったこともタイムリーであった。こうした薬剤は認知行動障害の改善が期待でき、精神障害者リハビリテーションとの組み合わせにより、従来よりも、より良い回復が期待されるからである。
 精神分裂病から統合失調症への呼称変更を機会に生活の視点を持った治療、すなわち精神障害者リハビリテーションへと治療の中心が移っていくことを期待している。