
−SSTの効果って何だろう?−
(第9回)
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自治医科大学 精神医学教室 岩田 和彦 |
今回も引き続き、研究結果を評価する基準についてお話です。治療に関する文献で重要な指標にはRR(Relative Risk:相対危険)、RRR(Relative Risk Reduction:相対危険度減少)、ARR(Absolute Risk Reduction:絶対危険度減少)、NNT(Number Needed to Treat:治療効果発現必要症例数)、などがあることを説明しました。
今回は「有意差」とは何なのか?を考えてみたいと思います。
多くの論文には統計学的検定が登場し、「2群の効果の差を検定したところ、危険率0.01以下で、有意差が認められた」、というようなことが書かれています。そして私たちは「有意差があるなら結果は正しいのだろう」と思ってしまうのですが…そもそも有意差って何なのでしょう?統計学的検定というのはもちろん比較している「2群の差」を証明するために行うのですが、その際に「帰無仮説」という仮説を立てて、少し回りくどい筋道で証明を行っていくのです。
帰無仮説とは「2群には仮に「差がない」と考える」というもので、この仮説が否定されれば「「2群に差がない」という仮説が間違っている」つまり「2群には差がある」ということになる、というわけです。
ではこの仮説が間違っているということをどうやって証明するのか?ここで登場するのが「危険率」なのです。統計によって導かれる結果は「仮説が○か×か?」というものではなく、「この仮説の確かさはどの程度か?」という確率の形で表されます。すなわち危険率1%以下とは「100回同じ調査をしたら、もしかしたら1回は2群に差がないことがあるかもしれないが、99回は2群に差が生じるだろう」ということを意味しているわけです。
ですから「2群の危険率は0.01以下で、有意差が認められた」、は「2群に差があるという仮説が正しい確率が99%以上ある」と言いかえることができるわけです。
危険率とは論文の中ではp値とか p-valueという表記をされているものですが、これは「2群に差がないという仮説が正しくなってしまう確率」のことなのです。
以上で危険率や有意差の意味は理解していただけたと思うのですが、最近統計学的検定の結果をこれらとは別の「信頼区間」という表現で示すような場合が多くなってきました。
「信頼区間」とは何なのか?例えばこんな例を考えてみましょう。
*あなたはある人と10回勝負のジャンケンを100試合行いました。あなたのトータルの勝率は50%でした。しかし1試合ごとの勝率は常に50%ではなく、ある試合では90%(9勝1敗)勝った時もありましたし、ある試合では10%(1勝9敗)しか勝てない時もありました。
この100試合のジャンケンにおいて、1試合ごとの勝率は最大が90%、最小が10%、平均50%ということになりますが、これを別の表現に直せば「ジャンケン試合の勝率は100%の確率で10%〜90%の区間に含まれる」ということができます。そしてこの10%〜90%を「100%信頼区間」というのです。
もしこの勝率の分布の極端な勝率を上下それぞれ2.5%ずつ除いたとき、勝率の最大が80%、最小が20%になったとしたら、「勝率の95%信頼区間は20%〜80%である」となります。さて、この「信頼区間」という形で表現することにどんなメリットがあるのでしょうか?例えば次の2つの効果の差についての表現を比べてみてください。
1)ある新薬Aによる精神症状改善率は60%、従来薬Bによる精神症状改善率は30%で、危険率5%未満で新薬Aにおいて統計学的に有意に高い効果が認められた。
2)ある新薬Aによる精神症状改善率は60%、従来薬Bによる精神症状改善率は30%で、新薬Aと従来薬Bの有効率の差の95%信頼区間は20〜40%であった。
1)と2)は、結局は新薬Aのほうが統計学的にも有意に効果が高いことを報告しているわけですが、信頼区間を用いることによりその効果の差は高く見積もればどの程度、低く見積もってもどの程度あるのか?ということを知ることができるというメリットがあるわけです。
さらにこの95%信頼区間と危険率はどのような関係にあるのでしょうか?
新薬Aと従来薬Bの有効率の差の95%信頼区間が20〜40%、つまり0.2〜0.4ということであり、信頼区間内に0を含んでいません。「95%の確率で0を含まない」ということは、言い換えると「0を含んでいる確率は5%より小さい」ということになります。ゆえに「新薬Aと従来薬Bの有効率の差が0である確率は5%より小さい」ということになり、結局「危険率が5%未満である」ということになるわけです。このことからも95%信頼区間という形での結果の表現が、より多くの情報を私たちに与えてくれることが分るでしょう。
前回心理教育についてのレビューを紹介したコクランライブラリーでは、この95%信頼区間(95%Confidence Intervals : 95%CI)を用いて効果を表現しています。
今回はコクランライブラリーの中から統合失調症(精神分裂病)の家族介入に関するシステマティックレビューのアブストラクトを紹介します。
( 家族介入に関するCochrane Review )
Family intervention for schizophrenia
Pharoah FM, Mari JJ, Streiner D
In:The Cochrane Library, Issue 4, 2002. Oxford: A substantive amendment to this systematic review was last made on 24 February 1999.
Background: 高い感情表出を示す家族内の統合失調症の人は、低い感情表出を示す家族の場合に比べて再発率が高いことが示されている。家族内の感情表出レベルを減少させることが期待される心理社会的介入が、現在精神保健スタッフによって実施されている。これらの介入は薬物療法の代替療法というよりもそれに付加する治療法として考えられており、それらの主な目的は家族内のストレスを減らし、再発率を低下させることにある。
Objectives: 地域において統合失調症およびその類縁疾患を対象に、家族に対する心理社会的介入による効果と標準的ケアによる効果を比較検討することを目的とする。
Search strategy: インターネットによる検索源としてThe Cochrane Library (Issue 2, 1998), The Cochrane Schizophrenia Group's Register (June 1998), EMbase (1981-1995), MEDLINE (1966-1995)を検索。
Selection criteria: 統合失調症と分裂感情障害の家族に焦点を当てており、5セッション以上の家族への心理社会的介入と標準的なケアとを比較検討しているランダム化比較臨床研究、またはそれに準じた臨床研究を選択した。
Data collection and analysis: データは確実に適切に、かつ可能な限り引用し、合算した。オッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)そして・治療効果発現必要症例数(NNT)をそれぞれ算出した。レビューワーは、死亡者やドロップアウトした者については改善しなかったものとして仮定し、最終的な結果の感度を分析した。
Main results:
家族介入は再発率を低下させる可能性が示された。
(1年間でOR 0.57・95%CI 0.4〜0.8 、NNT 6.5・95%CI 4〜14 )
主な結果の全般的な傾向は存在しないか、わずかに幾つかあるのみである、しかし家族介入についての否定的な研究は検索では見つからなかった。家族介入は入院率を減少させたり、服薬のコンプライアンスを向上させる可能性もあるが、これについてはデータがわずかであり、不確かである。家族介入によって本人や家族がケアからのドロップアウトする傾向に対する明らかな効果はもたらされなかった。全般的な社会機能障害や家族の感情表出レベルの改善は認められた。このレビューでは、家族介入が自殺を抑制するのか促進するのかについてのデータは得られていない。
Reviewers' conclusions: 臨床家、研究者、政策立案者、ケアを受けるユーザーはこのレビューから家族介入の効果に関して確信を持つまでには至らないかもしれない。しかし、すでに終了した研究から得られたさらに進んだデータは、大いに家族介入の実践を促すものであり、家族介入の対象者や介入方法や結果が日常的なケアの中で一般化される限りにおいて、より多くの研究が正当化されるであろう。
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