W.第3回全国世話人会in山口

3.地域生活支援のSST

明治学院大学 八木原 律子先生

T 新規事業との関連で就労支援のSSTを考える
第154回衆議院本会議において「障害者の雇用の促進に関する法律」が改正され平成14年5月7日公布の「障害者就業・生活支援センター事業」がスタートしました。この事業は、障害者の職業生活における自立を図るため、就業及びこれに伴う日常生活、又は社会生活上の支援を必要とする障害者に対し、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携を図りつつ、身近な地域に於いて必要な指導、助言その他の支援を行うことにより、その雇用の促進及び職業の安定を図る。」という目的で、平成11年度から始まった「障害者就業・生活支援の拠点づくり施行事業」の本格実施です。特徴として@雇用・福祉の連携による事業の実施A住んでいる身近な街で障害者の就業生活支援に取り組むB3障害に取り組むことが盛り込まれている点です。
事業内容は、表1を参照してくださると分かるように、就業生活支援に欠かせない一連の援助課程が盛り込まれています。
 
 障害者就業・生活支援センター ワーキング・トライの流れ(表1)
★ 申し込み・問い合わせ    面接・相談
    ↓
★ 体験参加          登録前に体験参加で利用確認
    

★ 登録            登録上の契約・雇用プラン作成
    

★ 就労基礎訓練  A就労セミナー(リハーサルのSST)
    社会就労センター・提携施設において職業生活習慣を確立         
★ 職場体験    B体験実習(直接支援のSST)
    ↓           協力事業所において訓練
★ 定着支援    
C就労ミーテイング(定着支援のSST)
                今後のサービスの検討
この流れに沿って、私たちはABCの箇所でSSTを活用しています。
例えばAでは、@チェックリストを基に個別対応やピアサポーターによる指導・評価A就労セミナー、これは5回を1クールとして職業生活を持つ意義(働きたい会社の条件等)基本的生活のチェック仕事探しのポイント(履歴書の書き方等)面接を受けるためのポイント(模擬面接・電話による面接依頼等)就労経験者を囲んで等の学習を行いますし、同時平行で職域団体の例会に参加することで、利用者の希望職種を伝える体験実習の場の提供依頼啓発活動紹介先訪問ジョブコーチによる事前の作業体験希望者の可能な作業調査がスムーズに行えるよう環境調整にも力を入れています。ここでのリハーサルを通して、必要に応じてSSTの場面に企業家の参加を依頼し面接者の役割を担ってもらいながら、企業が期待する労働者の条件などを伝えてもらうことにしていますし、直接ハローワークに出向き履歴書を基に指導官の面接を受けたり、コンピューターによる検索学習を行ったりしています。
Bの体験実習では、@実際の現場で学習する(面接・確認・説明を受ける・挨拶等)A現場のスタッフから、直接指導してもらうBジョブコーチは@Aが円滑に行われるように、指導することにしています。スタッフがジョブコーチとして参加することで、お互いにリハーサルした結果を確認できますし、その場で繰り返しスキル学習ができます。
Cの定着支援では、Bの体験実習中の課題を体験者からの提供で、問題解決技能訓練を用いて@仲間による相互支援AエンパワーメントB可能性を発見し、意欲の向上を図ることを目的に学習しています。
 
U まずは自分たちで行うSSTに取り組む
 社会就労センターが開設して5年目に入り、活動も落ち着いてきました。当初はレストラン風見鶏における接客について、例えば接客上の挨拶注文の取り方注文を運ぶときの挨拶レヂを打つときの挨拶客が店を出るときの挨拶等の学習を行うことで、客に喜ばれるように、そして利用者が獲得した接客のスキルを持って就職活動に活かせればと対処してきました。ここ1年程前からは、メンバーからメンバーへと接客のスキルが引き継がれメンバー主体によるSSTへと移行してきています。スタッフは振興を見守りつつ、くい違いを正す必要があるときロールプレイが必要なときスタッフが客になって感じたことを伝えるとき喫茶サービスの内容について等の場合は積極的参加を行っています。
最近の例として、「客にサービスを行う際、男性客と女性客をコーヒー碗に色違いを使ってもてなしたい。」「男性客はご飯の量を大盛りで、女性客には普通に盛りつけてあげたい。」などメンバーはとても丁寧にこだわりを持ってサービスをしたいと考えています。それに押しつぶされないように、スタッフはできるだけメンバーがリスクを持たずにメンバーの体験学習ができるようにアドバイスしていきます。「女性だってたくさん食べる人がいるよ。」「スタッフだから男性・女性が分かるけれど、普通のレストランではこんなことはしないよ。」「伝票に男性、女性と書き出すのも時間がかかるね。」「記号で書くようにしようか。」「もてなす方法は男性と女性と区別しない別の方法もあるんじゃない?」などと何度も繰り返し考え、改善点にチャレンジしてみて、その結果、言葉や態度で十分にもてなしを伝えようということになり、ロールプレイでのリハーサルに入ります。簡単にできることでもメンバーの意見を大事にして時間をかけていくと、メンバー一人一人が確実に力をつけ相互支援ができるということに気付かされるのです。
 
V 地域生活支援のSST
 この数年、SSTを活用しながら思うことは、練習する場所で課題達成を期待するのではなく、地域社会との接点、つまり地域住民との交流を視野に入れた支援にSST利用の進む方向があるのではないかと思います。現実社会と向き合う場合のSSTは、今直面している課題をどう乗り越えていくかを問題解決技能訓練で行うことが多く発生するのはやむをえないと思われます。また、SSTを活用し個人のスキルを高めると同時にその人が生活する家族や地域住民、職場等の環境整備も同時に進めていくことが効果的であると感じています。ですから地域では柔軟なSST対応を心がけ、@ポータブルを強調A街の資源(物的・人的)の活用B当事者を最大限利用することで、啓発活動につながる身近な地域で、折り合いをつけ、期待される人となれる(アンソニー)学習したことを即地域で活かせるという効果を生み出すことができるのだといえます。私は10数年地域で暮らす障害者にSSTを活用してきてきましたが、その利用方法が変化していることを実感しています。それはこの10年間でスタッフも利用者自身もSSTの持つ自己決定の学習効果として、自己責任の厳しさを理解した上で、楽しみながら主体的にSSTに取り組めるようになってきたからだと思います。これからの変化も楽しみながら日々活動していきたいと思うこの頃です。