W.第3回 全国世話人会in山口   
 
世話人と運営委員のみなさんの集合写真です。前列中央が西園昌久会長。会長の左(ネクタイ姿)は講演で参加してくださった長崎ウエスレニアン大学の田中英樹教授。
   
この項の報告者(世話人会の責任者)
天笠崇実行委員長(運営委員)
舳松克代副実行委員長(運営委員)

1.はじめに
2002年7月21日、第3回全国世話人会が、山口県内の「ホテルかめ福」で開催されました。山口経験交流ワークショップに続く3日目の企画ということで、連日参加された方は、さすがに疲れの色を隠せませんでしたが、世話人23名、運営委員15名の参加を得て成功裡に会務を終えることができました。
2.今回の特徴は3つ
今回の世話人会の特徴は、3点でした。
第一に、開催地の特徴です。過去2回は、東京開催でしたが、今回は山口開催でした。
第二に、運営の特徴です。山口経験交流ワークショップの実行委員会から、本会を開催するために、稲野靖枝・小西美恵子両世話人を中心にした現地実行委員会が組織され、その全面的協力を得て開催することができました。また、世話人会単独開催ではなく、山口経験交流集会に引き続いての開催であったことも運営面での特徴でした。
第三に、内容の特徴です。会のテーマを、「世話人活動の新たなる展開を目指して〜地域に起こそうプロジェクト〜」とし、地域生活支援においても高まる、SSTに対するニーズに、具体的にどう対応していくか、検討することにしました。そのために、「地域生活支援モデルの創出とSSTの可能性」と題したシンポジウムを前半に設け、長崎ウエスレヤン大学 田中英樹教授より、「地域生活支援の現状と今後のあり方」と題し、わが国のマクロレベルでの現状と方向性についてお話いただきました。続いて、明治学院大学 八木原律子助教授(協会運営委員)より、「地域生活支援のSST」と題し、ミクロレベルで実際の地域生活支援場面にどうSSTを応用するかについて、お話いただきました。(両講師の当日レジュメが本号に掲載されています。)
3.世話人(会)って何? 発足からこれまで
 恒例の西園昌久会長からのご挨拶に始まり、丹羽真一将来計画委員長から「世話人の役割−世話人会発足の経緯と期待されること−」について報告がなされ、天笠より「発足後の世話人会活動のまとめ」を報告しました。3者の要旨をまとめて報告します。
1)はじまりは...
 SST普及協会が発足したのは、1995年です。生活技能訓練(SST: Social Skills Trainig)の普及を通じ、わが国の精神保健・医療・福祉分野のサービスの向上に資することが目指されました。30名ほどの運営委員会を中心に、普及の立案やそのための活動が展開されました。実に多くの分野のみなさんが参加され、活動してきました。しかし、その活動にも普及状況にも、地域間・職域間(特に医師層)でばらつきがありました。普及協会の活動目的は、日本のどこででも、SSTを必要とする人が、疾患を克服し、地域生活での力を獲得できるようにすることです。そこで、この偏りをなくし、さらに発展させていくためには、運営委員という少数者だけではなかなか難しい。各地域・各職域に世話人の方を設け、広く普及していきたいということで、将来計画委員会を中心に検討が進められ、運営委員を中心に全国都道府県ごと、また職域ごとに世話人が推薦されました。
2)第1回全国世話人会のあらまし(慶応大学付属病院)
2000年7月に、開催されました。全国各地域、職域の世話人が選出され、お互いに顔合わせをし、それぞれがどんな活動をし、各地域での普及状況がどうなっているかについて共有し、続く1年間に向けた具体的な活動方針が話し合われました。世話人8割(39人)、計57人の参加を得ました。
2つの教育講演(「SSTの将来を展望する」(池淵恵美運営委員)、「SST普及の上での課題と注意点」(安西信雄運営委員))と「SST普及の困難をいかに乗り越えたか―各地の経験や普及方法から学ぶ」と題したパネル・ディスカッションが行われました。北海道・神奈川・愛知・山口の世話人・運営委員がパネラーでした。
3)第2回全国世話人会のあらまし(慶応大学付属病院)
1年間の世話人活動を通して、2つの課題が明確になってきました。運営委員と世話人の役割の違いと協力のあり方が曖昧であること、ブロック単位で世話人相互の情報交流をする際や世話人活動の「まとめ役」が必要であること、でした。そこで、各ブロック単位で、世話人と運営委員の役割分担と協力連携の具体化について話しあっていただき、また「地区代表世話人」8名が集団的な討議によって選出されました。世話人27人、運営委員17人の参加を得ました。
UCLAリバーマン教授の来日講演「コミュニティーメンタルヘルスにおけるSST」を通して、地域ケアの中でSSTを普及するための理念と戦略を学び、デモンストレーションとライブスーパービジョンが行われました。
4)過去1年間のあらまし
 2002年3月末現在、普及協会の個人会員は1225名、賛助会員は198施設で、現在、地区世話人が50人、職域世話人が3人です。世話人から寄せられた情報をまとめると、過去1年間の特徴は5つです。@まだまだ地域間でのばらつきはあるものの、徐々に普及のばらつきが改善されてきている。Aワーカー層では学会中にSSTをテーマにした自主企画が開催されたり、山口経験交流ワークショップに医師層から45名の参加が得られたりしたように、職域間の普及の遅れが大幅に改善されつつある。B世話人を主体に、各種講習会やワークショップが開催されるようになってきている。C都道府県ブロック単位や複数ブロックにまたがる、中規模企画がブロック単位で開催されるところもでてきている。Dこういった企画・行事には運営委員が招聘され、協力・支援関係が確立されてきている(たとえば山口経験交流ワークショップや本会の運営)。
4.2つのミニレクチャー(資料掲載)
 
5.地区別討議で話し合われたこと(*印は各地区進行係)
 恒例にしたがえば、前半の講演やシンポジウムを受けて、後半に、地区別・職種別に分かれて、各グループの特徴やニーズに沿った話し合いが行われて来ました。今回は、時間的制約から職種別討議を実施できませんでした。
以下に報告する地区別討議も、今回が3回目となり、プロジェクトとまでは行かずとも、各地区で今後1年間、具体的に何をするかがはっきりしたという、参加者の感想が多く寄せられています。
■北海道・東北地区(向谷地生良・三浦富士雄・船木明夫世話人、上野武治・丹羽真一・安西信雄運営委員)
<昨年度の活動>
北海道では、職能団体への講師派遣を行い、全道レベルでの研修会が実施された。青森では、精神保健福祉センターで研修会が開催され、被虐待児を対象にしたSSTの試みが始まった。福島では、家族対象のSSTが広がり、薬剤師と服薬自己管理モジュールを介して共同が進んでいる。地域生活支援センターの設置活動に取り組み、開設の暁にはSSTが実施できる拠点にしたいと奮闘している。
<今後の取り組み>
青森では、SST研究会の立ち上げが、福島では「21世紀精神医療プラン」の中へのSSTの組み込みが、北海道では、まず認定講師養成とモジュールの普及を介して一層現場でのSST普及が、計画として上げられた。
北海道・東北地区の報告をする向谷地世話人


■関東甲信越地区(辻貴司・黒崎あさ子世話人、前田ケイ運営委員)
<昨年度の活動>
栃木では、日精看主催の研修会が定期開催されている。県内多職種参加の会があったが、現在休止中である。山梨では、6月に研究会が発足した。日精看・病院・職業センター向けの研修会が開催された。
<今後の取り組み>
地理的に連携可能な近接県同士の情報交換から、まず始め、世話人や各地区で核となるスタッフや病院を確認の上、普及活動につなげていく。
辻世話人
ジェスチャーが豊か


■首都圏(春日未歩子・西田京子・斎藤潤子・佐藤ゆみ・森山拓也世話人、八木原律子・河岸光子・熊谷直樹運営委員)
<昨年度の活動>
東京・横浜・埼玉のSST研究会や経験交流会が引き続き開催された。3都県合同の企画として事例集の発刊が予定されている。東京では、精神病院協会主催の研修会が計画されている。千葉でも、SSTの学習会が開始された。
<今後の取り組み>
都内に1箇所、気軽に利用できるSSTセンターのようなものを作りたい。12月に開催される合同経験交流会を、首都圏世話人会として開催することとなった。
<協会への要望>
「入院生活技能訓練療法」は、入院生活の技能訓練ととられやすいので、せめて「生活技能訓練(入院)」と呼称を変更してほしい。
佐藤世話人


■中部・関西地区(瀧本優子・岸本徹彦・川端洋子・谷口光二世話人、角谷慶子・野中猛運営委員)
<昨年度の活動>
京都・大阪では、それぞれ年3回、2ヶ月に1回の研究会が継続された。奈良は、大阪の研究会に合流して経験を交流している。滋賀でも、SSTの普及が進んでいるが、対象が家族会になっており、やや異質である。兵庫では、会員150名を抱え、うち50名がOTである。文科省の助成を得て、OT向け研修会が行われ、今後数年の取り組みを冊子化予定である。
<今後の取り組み>
今年度開催された、近畿SST合同研究会を、今後持ち回りで開催することになった。来年3月に、京都で開催する。
■中国・四国地区(花房郁子・武藤多鶴子・大塚ゆみ子・小西美恵子・稲野靖枝・羽原俊昭世話人、的場文子・池淵恵美運営委員)
<昨年度の活動>
岡山では、各地で研修会が開催され、3つの病院で新たに取り組みが始まるなど、確実に広がってきている。しかし、核となって組織する人が出てきていない。鳥取では、福祉センターと日精看の2つで研修会が開催されているが、地域への普及が不十分である。山口では、3ヶ月に1回SST交流会が開催されている。研修は日精看主催のものが定期開催されている。家族会・作業所への普及も始まった。島根では、ほとんどの病院が病棟単位でSSTを実践しているが、病院間のつながりが全く無かった。
<今後の取り組み>
山口経験交流ワークショップでも、初級研修会のニーズの高さを改めて知った。小規模の初級研修会を継続的に開催していく。
羽原世話人
後ろ向きの写真で済みません


■九州・沖縄地区(上村真紀・山本浩一・原井宏明世話人、皿田洋子運営委員・西園昌久会長)
<昨年度の取り組み>
九州精神神経学会(鹿児島)の日程にあわせて、世話人会と研修会を実施した。
<今後の取り組み>
11月に、九州精神神経学会(大分)で、世話人会と研修会を開催する。昨年計画されて実施できなかった、各県のSST実施状況の調査のためのアンケートのたたき台を、この討議中に作成したので、ぜひ実施したい。地域で開催される研修会に協会のニューズレターを持参して宣伝したい。
上村世話人


6.おわりに
 31人の参加者からご提出いただいた感想文を見ますと、野中猛運営委員の司会による、田中・八木原両先生のレクチャーおよび西園会長のコメントから、ほとんどの参加者が強烈なインパクトを受けたことが分かります。地域ケアが叫ばれて日が経ちましたが、精神病床はほとんど減少していないという田中先生の指摘。一方、西園会長が、DHクラーク著の『21世紀の精神医療への挑戦』(蟻塚亮二監訳、創造出版)を引用され、フルボーン病院のクラークのような精神病院改革が徐々にだが、わが国でも確実に行われている実例を示されました。ともすれば、目の前のSSTの実践や研修会に追われ、施設内完結型のSSTになりがちなこと、わが国のマクロレベルでの精神医療・福祉の動向が、SST普及に密接な影響を与えていること、SSTの普及は単なる技術の普及では完結しないこと、これらを決して忘れてはならないというメッセージを受け取ったように思います。
 最後に、八木原先生からは、ことさらSSTではなくて、日常生活のどこにでもSST(のテーマや対象や実践の場)はあるという、地域支援の中でSSTを実践されてきたご経験からにじみ出る、素晴らしい視点をいただきました。SST普及活動の目指すべき方向であり、SSTがもっともっと普及してこそ、達成可能な目標でもあります。今回の世話人会で学び共有し計画した宿題を、少しでも達成できるよう、今後の世話人会活動に邁進して行こうと思いを新たにしました。